支援事業
●3:新しい取り組み
事例紹介:アテナ平和(2016.10.11更新)
社会福祉法人ヘレンケラー財団
就労支援事業所アテナ平和(大阪市阿倍野区)
■事業所概要 今回は大阪市阿倍野区にある就労支援事業所アテナ平和さんを訪問しました。 施設はJR美章園駅からすぐの非常にアクセスの良い場所にあります。25人の方が利用契約をされていて、平均20人前後の方が通所されています。 手間暇かけておいしくつくるお弁当 アテナ平和さんでは、お弁当の配食を行っています。主な配達先は近隣の障がい福祉施設で、一日100~150食ほどをお昼に配達しています。お弁当づくりは前日の午後から翌日分の準備をして、当日の朝からは調理や盛り付け、配達とあわただしく過ぎていきます。お弁当の内容も主菜と副菜が三品、ご飯と漬物・汁物がついて400円と大変リーズナブルになっています。 業者さんとのwin-winが成功の秘訣 もう一つはリネンサプライの仕事です。美容室やネットカフェなどで使用されたタオル類を洗濯、乾燥、たたんで袋詰めをして配送業者に渡します。きれいに洗濯することはもちろんですが、たたみ方にも注文があり、質と量にこだわった作業になります。 利用者さんが求めているもの さて、アテナ平和さんの平均工賃額は月額で44,805円(平成26年度)と大阪府下でも上位になります。利用者さんが工賃についてどう感じておられるのかについて伺いましたところ、自分でお金を自由に使える方であれば、工賃が上がることで働くモチベーションは上がるということでしたが、すべての方がそうではありませんでした。過去に利用者さんにアンケートをとられたことがあるそうで、その結果は一位が“やりがい”二位が“仲間づくり”三位以下が“居場所”“工賃”だったそうです。そういったところから、高い工賃を払える作業も必要だけどやりがいが持てることも伸ばしていきたいと考えておられます。現在取り組んでいる配食やリネンに続く新たな事業展開を考えた場合、やはりやりがいを大切にするということで、地域と密着したもの、直接、人の役に立っていると感じることができる仕事ができたらということでした。 地域に貢献することの意味 アテナ平和さんのある施設の5階には一般に開放された地域交流スペースがあり、行政関係や自治会、地域の子育てグループなどさまざまな人が活動に利用することができます。また、時間制で利用できるバスケットコートや夏場のプール開放は、地域の子どもたちやお父さん、お母さんでいつもにぎわっています。 (管理者の横山さん)
価格を抑えるためにはコストをできるだけ下げようということで、冷凍食品や加工をしたものはほとんど使わず、施設内で調理しています。仕入れをしている八百屋さんも、そういった事情を察して形が少し悪いものなどを安く仕入れていただいているとか。形はいびつでも手間暇をかけておいしくすることで、見栄えもよくお得感があるお弁当に仕上がっています。
また4年ほど前から、市内にある某自動車メーカーのトレーニングセンターにもお弁当を配達するようになりました。こちらは少ない月で300食、多ければ800食と発注にバラつきがありますが、お弁当の発注単価がよく工賃アップにつながっています。発注のきっかけは、先方がいくつかの施設のお弁当を実際に食べた中から選んでいただいたようで、とてもやりがいを感じておられます。
リネンのお仕事の1か月あたりの売上はトータル100万円ほどになるそうです。この売り上げを実現することができた要因としては“配送業者との提携”があります。一般的に多くの福祉施設が販路開拓(営業活動)を苦手としていますが、アテナ平和さんも営業をどうやっていくのかというところは課題がありました。一方で、配送業者さんも自らの売り上げを上げるためには数多く仕事をこなせる事業所が必要です。アテナ平和さんも最初はそれほどではなかったということですが、来る仕事に対して『断らない』『納期を守る』という姿勢を続けてきたことから、業者さんからまわってくる仕事の量も増えて、単価もよくなってきたそうです。景気が悪い中で確実に仕事をこなしてくれるアテナ平和さんの存在はとても重要で、今では業者さんから相談を受けることも、こちらから都合を言うこともできる対等な関係になっているそうです。
他にも季節のイベントとして、餅つきや夏祭り、ハロウィンなどがあります。取り組みは回を重ねるごとに浸透していて、夏祭りは地域の方が300人以上も参加されるなど、とても大きなものになっています。日常の業務以外のこういった取り組みは結構手間で大変なものですが、屋台で働く利用者さんの仕事ぶりを地域の方に見てもらえる場であり、地域の人に理解を深めてもらうために大切な機会となっています。施設の立ち上げ時には周辺地域からの反対の声やご意見もあり、大変なご苦労があったそうです。そういったことからも地域の人とどう関係性をつくっていくのかということは施設にとっても大きな課題であり、共生社会を目指すという理念からも積極的なつながりづくりに取り組んでおられます。■先進事例の紹介バックナンバー
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