大阪府工賃向上計画支援事業

ＮＰＯ法人　生野共働の家　こさり（大阪市生野区）

■事業所概要

ＮＰＯ法人生野共働の家こさりさんは、パンやお菓子の製造販売に喫茶を運営されている就労継続支援B型事業所です。『障害者と対等に共に働くこと』を理念として1988年に地域で小規模作業所を開所されました。こさりさんのパンは国産小麦100%で、天然酵母を使用したパンもあり、より安全な材料を使用しています。また、カレーの具やあん・クリーム・りんごジャム等も自家製のものを使用しています。
アレルギーのある方のため、卵や乳製品などを除いたパンも販売されています。売れ筋はアンパンやクリームパンなどの定番商品になりますが、飽きのこないおいしさがお客様にはたいへん好評なのだそうです。
現在、こさりさんを利用している方は6人で、朝9時から夕方まで熱心にお仕事をされています。多い時では一日に700～800個もパンをつくられるそうです。

取材のため、こさりさんのお店を訪問させていただきました。お店は、北巽駅前の交差点から東へ300メートルほど進んだところにあり、府道173号線（勝山通）に面しています。 “Bakery＆Café”という看板が目印になっていて、事業所の一階部分がパンの販売と喫茶のスペースとなっています。店内に入るとまずパンが並ぶ壁に目が惹かれます。壁は大きな黒板のようなイメージで、材料へのこだわりがうかがえるイラストが大きくデザインされています。イラストの下にはパンのトレイがひとつずつ棚に並べられているのですが、よくみるとトレイの位置が結構低い位置にあることに気づきます。お聞きすると車いすを利用される方の便利を考慮されているとか、そういった配慮もとてもいい印象を受けます。また中央のテーブルには食パンやその日のお買い得パンが並べてあります。食パンもいろいろ種類があっておいしそうです。お店の奥には焼菓子やケーキ、ジャムなども置いておられました。

さて、こさりさんの月額平均工賃は65,923円（平成26年度実績）と大阪府下でもトップクラスです。高い工賃を実現する理由を探るべく、どういった販売をされているのかお尋ねしました。

「店舗」

冒頭でご紹介した事業所の店舗での販売です。平日の他、第二第四日曜日も営業されています。お得なモーニングサービスも好評です。また、お店では月に一回の『パンの日』と、季節ごとに2～3日間のセールに取り組まれます。セール前には地域にチラシをポスティングされます。

「配達」

配達は売り上げ全体の約３割を占めます。固定の配達先は25件ほどあり、注文に応じてパンを配達します。週に一回の方もあればほぼ毎日の方もあり、注文頻度はさまざまだそうです。

「外販出店」

府庁のパン屋さんもそうですが、生野区役所や企業さんなどさまざまな場所で販売をされています。近隣の高校にも三校ほど販売に行かれているそうですが、職員さんではなく生徒さん向けに販売をされています。クッキーなどもよく売れるそうです。

「委託販売」

自然食品店や地域共同購入会への卸販売もあります。

こうしてみても、販売先の様子からは平均工賃額が高い理由となるような、例えば大口の販売先があるなど他の事業所と比べて大きな違いは見られません。けれども、昨年提出いただいた工賃引上げ計画シートによりますと平成26年度の総売り上げは1800万円とあり、製パン製菓を中心にした事業所の中でもかなり高い金額であることがわかります。その点に着目しますとやはり生産力と販売力が非常に高いということは間違いないと思われます。小規模の事業所であっても高い売り上げを実現することで高い工賃水準に反映しているといえますが、それが大口の受注先ではなく、地域の中にいらっしゃるたくさんの支援者に支えられていらっしゃるということが注目すべきところなのかもしれません。

（管理者の田中さん）

ちょうど取材をさせていただいているときにご年配の方がパンを買いに来られていました。 「私ね、（こさりさんが）向こう（以前の場所）にあったときから買いに来てるねん」 と、お話していただきましたが、昔からの馴染みのお客様がいらっしゃるのはお店にとってとても心強いことですし、商品を繰り返し購入していただけるということが一番の強みなのかもしれません。
こさりさんは材料にこだわった手作りパンのお店として、地域のみなさんとしっかりつながっておられます。

■先進事例の紹介バックナンバー
http://l-challe.com/kouchin/projects/archives/957